2018年12月25日火曜日

結婚式の記録映像と音楽著作権について

12月25日。
クリスマスですね。
いよいよ年末という感じになってきました。

前回予告したので、今回は結婚式の記録映像と音楽著作権について書いていきたいと思います。
前回の記事はこちらです。
・プロフィールムービーを持ち込むときの音楽著作権について


記録ビデオにおける音楽著作権問題


僕が結婚式のビデオの業界に入ったときに、結婚式のビデオといえば当日の記録ビデオ(2時間くらいもの)とプロフィールムービーのどちらかでした。
それからかれこれ12年くらい。
いろんな変化がありました。

大きな出来事は
・撮ってだしエンドロールの定番化
・一眼ムービーの登場
の2つかなと思います。

この二つは旧来の結婚式の記録ビデオのあり方やビデオグラファーに求められるものを変えました。
当日の2時間くらいの尺の記録ビデオも以前として販売を続けられましたが、結婚式のビデオのひとつという扱いに変わっていきました。
いまでは記録ビデオを撮影したことのないウェディングビデオグラファーなんていう人達もたくさんいます。

そんな状況のなか、ここ数年、記録ビデオにさらに大きな問題が起きました。
それが音楽著作権問題です。
ジャスラックが結婚式での音楽使用について立場を明確にしたことで、記録ビデオはかなり微妙な存在へ追いやられつつあります。
具体的には、結婚式のシーンで音楽が演奏されている場面を撮影した映像を販売する際にも音楽著作権の処理が必要になるというジャスラックの見解が示されました。
演奏とは生演奏や歌唱ということだけでなく、BGMとしてCDを再生することも演奏と言います。

そのことで、記録ビデオの業者は選択を迫られることになりました。
・音楽の演奏されているシーンは音声をミュートしてフリー音源に差し替える。
もしくは、
・アイサムに登録されている音源に限り収録し、著作権の処理のために費用を新郎新婦に負担してもらう。

ただでさえ、高額という印象のあった結婚式のビデオの価格を権利処理のために上げるというのは現実的ではなく、多くは音源の差し替えという処理をすることになりました。
ウチキフィルムでも映像素材を納品する際は音声の差し替えの処理をしています。

今まで当然にあったサービスの内容は、新郎新婦のニーズなどに関係なく変更を迫られました。
このことは記録ビデオから婚礼ビデオ業界に入った僕にはショックなできごとでした。



記録ビデオと音楽


記録ビデオが欲しいと思う場合はどんなときか?
もちろん色々理由はあると思います。

その中には、ご披露宴の中の余興をしっかりと残しておきたいということもあると思います。
余興では音楽が使われることは非常に多いです。
中でもダンスや歌は花形です。
まさにビデオでこそ残したいシーンだと思います。
なぜなら、そこには写真では残せない『音』が残るからです。

逆に言えば、これらのシーンが残せない記録ビデオは商品としてかなり苦しいです。
音楽著作権の問題は、まさにこのシーンを直撃しています。

アイサムの登録楽曲であれば、お金を払って権利処理をすることで解決することはできます。
ただし、そうでない場合はジャスラックに直接問い合わせることになります。
もちろん問い合わせたところで権利処理が出来ないものや、海外の楽曲では非常に高額な費用が発生する場合もあります。
そういった曲は実質的には記録ビデオに収録するのは難しい状況にあります。

とはいえ、たとえば余興で使う曲はアイサムの登録楽曲の中からわざわざ調べて選んでくるご友人というのはいないと思います。
中には、サプライズで急に洋楽を歌いだす人もいたりするので、そういう場合は業者としてはもうお手上げです。

そういった『余興を映像で全部を残したいなら、ご親族や友人に頼んで撮ってもらってください』という非常に奇妙な状況が現実としてあります。



映像で記録する立場で感じる問題点


①新郎新婦が『いつ』そのことを知るのか?
新郎新婦はいつ、プロが撮影する映像に自分で選曲したBGMが入らないことを知るのでしょうか?
また、余興で演奏したり流したりする音楽がプロのビデオグラファーには収録できないことを知るのでしょうか?

ウチキフィルムにお問い合わせいただき、打ち合わせをしたときに初めて知るというカップルもいます。
お問い合わせ後すぐに打ち合わせをすることのですが、早い人だと半年前とかですが、間際のお問い合わせだと挙式1ヶ月前という場合もあります。

会場でも、実はビデオの商品の説明のときに始めて聞かされるということがあるようです。
実際にずっと見積もりに記録ビデオが入っていて挙式の1ヶ月前に会場で説明を受けて、『それなら記録ビデオはいらない』となって、それでも素敵な映像は残したいということでウチキフィルムにご連絡をいただくということがありました。

もちろんすべてのカップルが結婚式のビデオを残したいわけではないので、会場の契約や結婚式の準備の始めに伝えるのも難しいとは思います。
それでも色々準備して、音楽も選んで、余興の演奏も頼んで、だんだん記録を映像で残したくなったタイミングで聞かされるのもどうかと思います。
『それ、早く言ってよ』って思う人もいるんじゃないかと思います。

持ち込み料の話もそうですが、結婚式場は後だしの説明が多くて不親切という印象を強く持ってしまう要因の一つになるんじゃないかと思います。



②ウェディング現場の他業種との関係性について
結婚式で音楽著作権に関わる人は、
・会場
・音響担当
・司式担当
・映像制作会社
です。

結婚式の音楽利用に関してはほとんど『演奏』に関することが多いです。
演奏に関して言えば、会場がジャスラックと包括契約さえしていればOKという感じで理解されています。

基本的に自由に選曲しています。
実際の施行にはそれほど影響をしていません。

その中で映像の記録は『演奏』とは違い『複製』に関するものなので、著作権や著作隣接権が有効な音楽を記録・収録する場合は別途個別に権利を処理しなければなりません。
ただそのことを気にしているのは実質、ビデオの業者だけだなぁと感じることは多々あります。

たとえば、司式担当の業者さん。
人前式ではあたりまえに著作権の活きた曲をBGMとして使うことが多いです。
時には誓いの言葉や大切な人からメッセージをもらう時すら演奏を続ける演奏者もいます。

最近では教会式ですら、著作権の活きた曲を演奏します。
多いのは、
Far away
You raise me up
The rose
Time to say goodbye
などなど。
挙式の荘厳な雰囲気の演出に良いと思います。
でも会場でも記録ビデオを売っているのだからわざわざ収録にお金が掛かる曲を使用して、記録ビデオの価値を下げる必要があるのだろうか?という疑問が単純に沸いてきます。
まぁ、単純に考慮をしていないというだけだというか、業者間のコミュニケーションの問題があると思います。

たとえばこのようなことがウェディングの現場では存在しています。
これは他の業者さんが悪いというお話ではなく、結婚式の映像をプロが記録する価値というのをもう少し広めて、認められていかないといけないんだろうなということだと思っています。
多分ビデオの業者も他の業者さんからしたら、『何で?』っていうことがたくさんあると思います。



最後に。


ぜひ分かって欲しいのは、だれも好き好んで、当日に流れている音楽を消したいわけではありません。
僕に関して言えば、自分の仕事の中で一番嫌いな作業です。

僕自身は結婚式の映像の根源的な価値は『記録』であると考えています。
ルールが変わり、ありのままではないけれど、それでもカップルが映像を見て、結婚式当日の感情や記憶をよみがえらせてくれるなら、それは立派な『記録』なんじゃないかなと思います。
だからこそ、僕の仕事には価値があると信じています。
2人にとって幸福な時間の記録が残ることがこれからの人生を支えるような根っこのようなものになって欲しい。

本当はそのまま納品したい。
でも、そうするにはあまりにも課題や負担が多い。

それでも出来るだけカップルの想いに寄り添って、ずっとその2人にとって価値のある映像を作っていきたいと思います。
よろしくお願い致します!

ウチキフィルム 打木 健司

ウチキフィルムのホームページはこちらです↑


映画の中の結婚式について

12月31日。 大晦日。 仕事柄、秋は忙しく日々が過ぎ去っていくので、10月くらいには夫婦で『正月が楽しみだねー』なんて話をしています。 大晦日の夜から元旦とおせちを作って食べて、お酒をのんで、雑煮を食べてという毎年のお正月は、夫婦にとって大切なひと時です。 お正月の特...