12月10日。
師走。
今年のことは今年のうちに書いておこうシリーズ、第2弾です。
つい先日、11月に結婚式を終えたカップルのご自宅で後撮りをしてきました。
そこで後撮りを終えた後に、お2人とお酒を飲んで楽しい時間を過ごしました。
お2人のことをさんざんインタビューで聞いた後だったので、逆質問コーナーのような感じでいろんなことを質問されました。
僕は10年くらい前は、結婚式の撮影はお金のための労働で、それ以外の時間はショートフィルムやミニシアター規模の映画の脚本を書いていました。
そんなときの話もしました。
脚本の勉強は専門学校でしましたが、学校で教わったというよりは独学で本を読むことが多かったです。
ハリウッドの脚本の教本をよく読んでいました。
『神話の法則』とか。
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2002年に買った本なので、ボロボロです! |
基本中の基本だから、だいたい古い映画を手本にしています。
なかでも良く出てきたのが、『オズの魔法使い』。
すごく古い映画で、今見るとそんなに面白い映画ではないかもしれません。
それでも女の子と案山子とブリキのきこりとライオンの物語は今に通じる普遍的な要素が詰まっています。
というのを話の枕に、今回は『撮影指示書』について書いてみます。
『撮影指示書』
『撮影指示書』とは、こんな写真を撮ってくださいという要望を、実際の具体的な写真と一緒に伝えるペーパーです。
インスタのタグでも見かけるワードです。
10年くらい前はゼクシィの切り抜きを持ってくる人は結構特殊な人でしたが、いまや指示書を持ってくるのは普通の光景らしいです。
フォトグラファーがA4の紙に何枚もプリントアウトした『指示書』とにらめっこしているのをよく目にします。
すごく印象に残っているシーンがあります。
それはロケーション撮影で、プリントを見て1カット撮るたびに新婦に確認をするフォトグラファーの姿です。
持ち込みNGの会場で、指名も出来ない会場提携のフォトグラファーというのであれば理解も出来るのですが、彼は数多いるフォトグラファーの中から選ばれた持ち込みカメラマンでした。
一生懸命撮影している姿はとても素晴らしいけど、なんだかぎゅっと苦しくなる時間でした。
新郎新婦はどっちかと言うと、クリエイティブな話に理解がある、すごく良い人。
実際、ムービーに関しては僕は好きなようにやらせてもらいました。
『どうしてこんなことになっているんだろう?』と、現場でモヤモヤしたのですごく覚えています。
他にも和装での挙式なのに、当日渡された指示書にはウェディングドレスで撮られた写真があり、『意味がわからない』と困っている会場提携のカメラマンと一緒に撮影することもありました。
撮影指示書をめぐる問題。
撮影指示書が一般的になったのは、そもそもは会場提携の業者では『カメラマンが選べない』『カメラマンと事前に打ち合わせができない』、その上、『持ち込みNGで好きなカメラマンも呼べない』という状況での自衛策という意味合いが強かったと思います。
それ自体は当然の想いだと思いますし、合理的で失敗のない方法です。
最初は本当に結婚式の思い入れが強い花嫁が作るものというイメージでした。
それがブログやインスタで、マストで用意したほうが良いものとして広がったものなんだろうと思います。
今はとりあえず『インスタのお気に入りを寄せ集めて作ってみた』というものが多いのかなと印象です。
良い面は
・カメラマンも欲しいカットがわかるので、後からこんな画が欲しかったという事態は避けられます。
良くない面は
・指示されたカットを撮ることが優先順位の先頭に来くるので、カメラマンがこの2人をどんな風に撮ろうか?という部分を考えなくなります。
結果的に撮影そのものが作業的になりがち。
・現実的なタイムテーブルの中で撮影するには無理がある場合も多々あり、カメラマンへの負担が大きい。
現場では困惑のほうが大きいかなと感じています。
今のところ、『指示書』を手にしてため息をついているカメラマンに会った事はありますが、『指示書』大好き!というカメラマンには会ったことはありません。
『撮影指示書』って名前が、クリエイティブな空気を殺してしまう名前で悲しいなと個人的には思います。
どんな仕事であれ、関係性であれ、一方的に書面で『指示』されるのは、あまり気持ちの良いものではありません。
本当はまず、『打ち合わせ』があるべきだと思います。
打ち合わせのための資料という意味であれば、『指示書』のようなものがあっても良いと思います。
あくまでもヒント。
打ち合わせをして、どうしてこのカットが欲しいのか?という2人の思いを知れば、カメラマンも『じゃあ、実際にはどう撮ろう?』とか『こうやって撮ったほうがいいんじゃないか?』と考えることができます。
カップルにとっても、自分にとって何が大切か?を考える機会になるんじゃないかと思います。
そうやって一緒にイメージを作っていくことで初めて信頼関係が生まれて、2人とカメラマンの作品になるんじゃないかなと思います。
綺麗ごとなんだろうとは思います。
そんなことが出来てたら、『指示書』なんてものがこんなに広まっていません。
現実には当日まで誰が撮影するかもわからず、打ち合わせもない。
撮影会社も現場撮っているカメラマンの『打ち合わせ』なんてやってられない。
提携と言っても実際には外注のカメラマンばかりだから、できれば当日まで会わせたくないし、スケジュール的にも難しい。
そんな現実ですが、それでも本当にまずは人と人との信頼関係を作ること、それが最初だと思いたいです。
ウチキフィルムでもお問い合わせいただきます・・・
実は他人ごとではなくて、今年の春、数年ぶりに『こんなオープニングムービーを作ってください!』と他社のサンプルのURLが貼られたメールが来て困惑したことがありました。
困惑した結果、『その映像が作りたかったら、その業者に頼んだほうがいいかも』ということをオブラートに包んで返信しました。
もちろん、それでもウチキフィルムに頼みたいという理由があれば、お受けします。
多分、他社のコピーはしません。
率直に思うことは『あなた』の結婚式で他の誰かの真似をしてどうするの?ということです。
ゼクシィの広告だったり、何かの映画だったらまだ分かるのですが、会ったこともない赤の他人の結婚式の映像をコピーしてどうするんだろう?
2人の個性、美しさ、すばらしさは『あなた』の中にしかないはずなんです。
高いお金を払って、誰かみたいな写真を撮って、誰かみたいな映像を作って、誰かみたいな結婚式を挙げるなんて『もったいない』と感じてしまいます。
インスタもピンタレストもユーチューブももちろん参考になるし、便利なツールです。
でも、そこにあるのは誰かの結婚式。
『あなた』の結婚式ではありません。
まずは自分たちの引き出しの中を探してみてほしいなと思います。
ウチキフィルムで結婚式の当日やオープニングムービーをご注文頂いた場合は、まずお2人のことを聞きます。
そのために直接会ってお話をします。
テンプレートがあれば、お互いに楽というのはあるとは思いますが、それでは『僕』がその『2人』を撮る意味はないなと思ってしまいます。
大事なのは2人がどんな人、どんな風に出会って結婚して、どんな人生を過ごしたいか?
当たり前だけどみんな違う。
だから、結婚式の撮影は面白いし、やりがいのある仕事だと思っています。
本当に欲しいものは・・・
結婚式は本来、自分自身に向かいあう、とても貴重で大切な機会だと考えています。
自分自身の人生の表現の場。
振り返って、感謝を表す場。
冒頭で触れた『オズの魔法使い』で冒険の末に、主人公が最後に気づくことがあります。
それは
『本当に欲しいものはうちの裏庭より遠いところにはない』ということです。
大切なものはもうすでに2人の中にあって、それを表現するのが僕たち結婚式に関わる人の仕事だと考えています。
2人の引き出しや裏庭を見て、本当に創造的な仕事をすること。
結婚式のプランナーやフローリスト、フォトグラファー、ビデオグラファー、みんながそういう仕事ができる業界になること願っています。
ウチキフィルムでは現在2019年のご予約を受け付けています!
ぜひお気軽にお問い合わせください。
ウチキフィルム 打木 健司